Sword Strike 11



騎士王4


「・・・・・なつかしい」

大きな橋の真ん中で立ち止まり、川を眺める。

前回見た風景と何も川っていない。体を撫でる風も。川っていない。

「セイバー」

それは、あの時の再現。

佇んでいる私を呼び・・・・

「シロウ・・・・・・」

胸がドキン。ドキン。と大きく脈打つ。胸の前で手を組み、目を瞑る。

心地よい苦しさというのだろうか。このままでいても良いとすら思った。でも、私が狼狽したまま彼に逢うのは良くない。

彼に伝えたい気持ちが伝えられなくなりそうだから・・・・


「セイバー!」

「シロウ?」

一瞬、彼があの時と同じく目の前に立っているように見えた

「・・・・・なんです、アーチャー?」



「君は何時までそうして黄昏ているつもりだ? まさか日が暮れるまでか? マスターが迎えに来るまでか?」

そう言った後、アーチャーがバツが悪そうに顔を背ける

「・・・どうしたのです?」

「いや、気にするな。言ってみて、あのマスターなら本当にやりかねんと思っただけだ。それでは、先を急ぐか」

クルリと踵を返してアーチャーが歩いて行く

「待ってください」

私も彼の後を追う



衛宮3


「・・・・・はぁ」

遠坂が小さなため息をつく

「どうした?」

「これから私たちが会うのは退魔師のトップよ。機嫌を損ねようものならもう此処には住めないくらいの権力があるの」

ああ、そういえば遠坂は冬木の街の管理者って肩書きもあった。

「会った事無いのか?」

「ええ、まったく。この街は黙認て形で管理を任されていたからね」

なるほど、お互いどんな人間かわからないのか。



「此方です」

一成の声と共に部屋の襖がスッと開く。


ゆったりとした動き、僅かに靡く髪。それは黒と言うよりも深い藍色と言える。

着物の色と合わさり、それは夜を想像させた

「・・・・・・」

そして、対極的に白い肌。

素直に綺麗だと思った。

言葉を失ってしまう。

一成が壊れてしまった理由を俺も理解した。

確かに、日本女性と言うものの理想像が彼女そのものだったのだから・・・・

その女性は静かに座り、俺を見つめてくる

「・・・・・・」



「ふふっ」

優雅に彼女が笑う

「そんなに緊張しなくても良いですよ」

「あ・・・・はい」

曖昧に頷く


「痛っ・・・・」

腕を抓られた

その犯人の遠坂に目線を動かすと”粗相をしたらコロス!”と言うアイコンタクトをしてきた。

はっきり言って、相当怖い

「自己紹介がまだでしたね。私は月読。裏荒野の月読。退魔師の長。死の管理人。色々呼ばれていますが今はお休み中ですから紗那と呼んでください」

「あ、はい。紗那さんですね」

ギリッとさっきよりも強く腕を抓られた

「あんたねぇ・・・・・」

遠坂が呟く。

「失礼しました”紗那様”私はこの冬木の街を管理しています遠坂 凛です。隣の男が私の弟子の衛宮 士郎です」

ああ、そう言うことですか。様付けで呼べと、そう言うわけか



「ええと、凛さんと士郎さんですね。別にさん付けでも呼び付けでも好きに呼んでいただいて結構ですよ」

「呼んだら殺ス」

即座に遠坂が脅してくる

「遠坂、落ち着け」

粗相するなとか言ってたお前が一番粗相してるぞ。

「あっ・・・・・」

バッっと姿勢を正し、下を向いた遠坂の顔は真っ赤になっていた

「では、本題に入りましょうか。貴方は私に何を聞きたいのですか?」

少し首を傾げて紗那さんが問いかけてくる



こんな風に問いかけられたら全てを正直に話したくなってしまう

けど流石に”アーサー王が帰ってしまったんですが、どうすれば会えますか?”とは聞けない

多分、大病院の精神科に直行させられると思うから。

「ええと、去年少しの間一緒に過ごした女の子がいたんですが突然帰ってしまったんです。連絡先も居場所もわかりません・・・・でも、もう一度だけ逢いたいんです」

「なるほど、その方と会う方法を私に聞きたいのですね」

紗那さんの問いに頷く

「・・・・・」

紗那さんは目を瞑り、何かを考えてるみたいだ

「士郎、真に受けない方がいいわよ。そんな事わかるはず無いんだから」

紗那さんに聞こえないように耳元で遠坂が囁く

「ああ、ムー大陸にいるからそこに行けとか言われても困るからな」

俺も聞こえないように相槌を打つ


「いいですか?」

「あっ、はい!」

紗那さんが目を開ける

「彼女に逢った事で貴方の人生は変ってしまうでしょう。もしかするとそれは”死”かもしれない。それでも良いですか」

問われる。それは俺の決意を試しているのだろうか

「ええ、構いません。彼女に逢えたなら、そのあとどうなろうと構いません」

その決意は本物。嘘偽りの無い俺の心

「ならば、竹刀を二本持って彼女と別れた場所に行きなさい」

「「はぁ!?」」

遠坂と声が重なる

偉い人だってわかってる。失礼なことを言っちゃ駄目だってのもわかってる。

わかってるけど「あんたなに考えてるんですか? 頭のネジが数本飛んでるんじゃないですか!?」って本気で言いたくなった

「むっ、信じてませんね?」

拗ねたように紗那さんが文句を言う。

ちょっと可愛いかも。

「うげっ!」

「士郎、さっさと竹刀持って”アソコ”に行ってきなさい!」

思いっきり肘が入って悶絶する俺に遠坂はそう言い捨てる


「お茶をお持ちしました」

そのとき、一成がお茶を持って部屋に入って来た

「んっ?どうした衛宮?」

「い、いや、なんでもない。一成、竹刀を貸して欲しいんだが・・・」

「ああ、玄関の横に数本立掛けてあるから好きに使え」


「サンキュ」

俺は玄関に向かうことにする

「それじゃ、お茶が無駄になってしまいますから一成さん。三人で少しお話しましょうか」

「ははは、はい。喜んで!」

一成も嬉しそうに答える。



再会1

「よ、おそろいだな」

部屋に入ると、知った顔、知らない顔、かなりの人数が雁首そろえてる

「えっと。お久しぶりです」

「久しぶりですね」

黒桐たちも各々挨拶する

その中に白い髪の男が座って不機嫌そうにタバコをふかしてる

「なんだ、お前も今回参加するのか?」

「・・・・・」

ポトリと彼の吸っていたタバコが落ちる

「なんだよ、つれないじゃないか。ガキの頃一緒に遊んでやっただろ?」

「やだ・・やだ、やだやだ! 帰る帰る〜!」

失礼な奴だ。微笑んでやったってのに怖がるなんて。

「ちょっと、橙子のせいで嘉向は歪んで育っちゃったんだよ。女嫌いになるし、素直にならないし」

隣のショートカットの女性が口を開く



「知らないよ。私は神父様に相手をして欲しいって言われたからしてやっただけだ」

子供の頃、たった数週間だけだったが私は教え子のように彼を教育した。

「えっと、そうすると彼の先生が橙子さんなわけですか?」

志貴が問いかけてくる。確かに、彼と青子よろしく私と彼もそう言った関係だったわけだが・・・・・

「んー、志貴とは正反対に育ったな」

率直な感想。ポリポリと頭を掻いて歪んで育った男を見る

「姉貴に教育されたんじゃそうでしょうね」

嫌味ったらしく言葉を吐く女

「五月蝿い。殺されたくなかったら失せろ」

有らん限りの憎悪を込めて睨む

「ふんっ、私だって直接関わりたくないわよ。でも仕方ないでしょ”聖杯”が出てきちゃうんだから」

・・・・危ない危ない、本題を忘れるところだった。目下聖杯の破壊が最優先。いくら殺したくてもそれが終わるまでは我慢するしかない。

「なら居るのは我慢してやる。私には関わるな」

「こっちこそ私に関わらないでね」

フンッとお互い顔を背ける



「えっと、司祭様と橙子師は知り合いなんですか?」

ああ、そうか鮮花の学校は関係があるからな。知っている可能性は高い。

「司祭?」

黒桐が問いかける

「そうだ、その男は司祭だ。”粛清機関”の責任者ジョーカーとも言われてるがな」

この間のアマンダからの連絡で次いでに入手した情報だった。司祭と言う立場上、表立って行動する事は少ない。その代わり行動すれば確実に仕事をこなす。だからこそのジョーカー。だからこその切り札なのだ

「ついでにそっちの女はファル。金魚の糞で実働部隊のトップだ」

つまり、此処にはシエルクラスの人間が二人ほど居るってことになる。

「あと、そっちの男は黒良だったか?」

奥で世話をしている男を見る

「ああ、そうでしたね。私と橙子さん鮮花さんは直接お名前を聞いていましたね」

シエルが頷く


「はい、お久しぶりです。祁答院 黒良です。その女性は姉の朱加」

「朱加です。よろしく」

小さな女性が一礼をする

「フム」

「なに・・・か?」

全身を見る私に朱加が怪訝な顔を浮かべる

「秋葉に気をつけろよ」

「はい?」

「お前さんのプロポーションは秋葉を挑発している」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「橙子さん、なんて事言うんですか〜〜!」

秋葉が髪の毛を真っ赤にして激怒した






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