sword strike 12


再開 −boy Meet Girl−



「はぁ、はぁ、はぁ」

走っていた。

最初は落ち着いて歩いていこうと思っていたはずなのに。

自然と歩む足が速くなり。無意識のうちに走り出していた。

「俺も、相当のお人よしかもな」

見ず知らずの女性、その人に促されて目的の場所に向かってる。


普通の人間ならその人に”此処に行けば会えます”なんて言われても一笑に付しているところだ



なのに

それなのに

俺は笑い飛ばすことが出来なかった


彼女が真剣に話をした事もあるけど、やっぱり俺自身も現実になって欲しいと思っていたから。

「にしたって、竹刀二つを持って行けは無いよな」



チラリと手に持った二本の竹刀を見る



別れからほぼ一年。

俺は何処まで強くなっているだろうか?

俺は何処までお前に追いつけただろうか?


俺は、俺は・・・・・・



「あっ・・・・・・」

フワリと優しい風が吹いた。

寒い冬の風にしては、身を切り裂くような冷たさは感じなかった。


「ふぅ〜」

立ち止まり、大きく深呼吸する

そしてゆっくりと足を進める。

焦る必要は無い、それよりももし再開できたなら彼女を笑顔で迎える。それだけだ・・・・・



丘をゆっくりと登る、此処で彼女と別れたんだ・・・・・

「って、いないじゃないか〜〜〜!!!」


力の限り叫んだ。そりゃ、信用した俺も悪かった。それは認める。

認めるけど、これはあんまりだ。ちくしょう、俺は絶対に神様なんて信じないぞ!!






「シロウ?」

近くから声がする




「えっ?」



近くの岩からピョコンと一房の金色の髪がはみ出してる



「すみません。誰かが来たとわかったので・・・・・・無意識に隠れてしまいました」

岩場から、白と紺の服を着た小さな人影が出てくる



「あっ・・・・・・」

何を考えていたのか。たった今考えていたことすら真っ白に塗りつぶされる。

考える事も出来ずにただ、ただ、目の前にいる女性に魅入っていた。


頭の中はぐちゃぐちゃ、しいて言うなら天子と悪魔が手を繋いでフォークダンスをしてるようなもんだ。何が良くて何が悪いか、嬉しいのか悲しいのかわからない。



「ハァ〜」

目を瞑り、眉に皺を寄せながら大きなため息を着いた後、セイバーは此方に歩いてくる

「あ、あの・・・・・」

上手く口が動かない

「・・・・・」

セイバーは無言のまま俺の手から竹刀を一本手に取って少し離れる


「シロウ、構えなさい」



何を言ってるのかわからない


「早く!」


強く言われて、無意識のまま構えを取った

「では行きます」

セイバーの周囲の空気が緊張する



「ハァッ!」

ズドンッと竹刀ではあり得ない音を聞きながら意識が消えていった



・・・

・・・・

・・・・・



「んっ」

冬にしては暖かい日差し。

「起きましたか?」

フワフワと頭の後ろが心地いい感触

目をゆっくりと開く


「夢じゃ、無いんだよな?」

夢のようだけど。さっき食らった一撃の感覚ををズキズキと頭に感じてる



「私もこれを夢と思いたくはありません」

俺を覗き込んでいたセイバーが頷く


「はは、俺も多少強くなったつもりだったのに・・・全然だったよ」

肉体的にも、精神的にも俺は彼女の足元にすらいない。


「そうですね。肉体はともかく、精神的なものはそう簡単には直りませんから」

セイバーが微笑む



「それよりもシロウ、私の想いは伝わりましたか?」

「想いって?」

「剣を交えたときが一番私の気持ちが伝わると言ったのは貴方ですが?」

ああ、そうか。そうだよな・・・・・・

「うん、これ以上無いってくらい伝わった。俺も逢いたかったよ」

微笑む。それは凄く自然に出来た。多分・・・・最高の笑顔



「んっ・・・・・・」

セイバーの顔が近づく

俺もそれに答えるように目を瞑る


唇が触れ合う。セイバーの体を優しく引き寄せる

「はぁ・・・・・」

そして、ほんの少しの間をおいて離れる

ポトリと落ちる。

それは一度ではなく、ポトリ、ポトリと落ちてくる

「駄目ですね。シロウが取り乱すことがわかっていたので・・・・私はしっかりしていようと思っていたのですが・・・」


セイバーが涙を拭う

「セイバー・・・」


「シロウ? きゃっ」

体を起してセイバーを俺の横に倒れさせる

今まで聞いた記憶の無い可愛い声を出すセイバー

「シロウ、急に押し倒すのは卑怯です」

卑怯者でもいい。

「まだ、日が昇っていて暖かいからさ。二人で少し昼寝しようと思って」

「・・・・そうですね。少し肌寒いですが、こうしていれば問題ないですね」

俺にピタリとくっついてセイバーが目を瞑る

「ああ」

俺も答えて目を瞑る

もう絶対に離さないからな、セイバー・・・・・・・・・






再契約



「はぁ、あの馬鹿うまく出会えたのかしら?」

境内の外れで、呟く。

月読様との雑談は申し訳ないが中座させてもらって、私はフラフラと境内を移動しているわけだ。

それは、最初追いかけて確かめるつもりだったけど・・・・・



「あの馬鹿が項垂れてたら、かける言葉が見つからないものね」

私もセイバーには戻ってきて欲しいと思う。なんせこの一年近く、士郎は腑抜けたままの生活だったのだから。やる事はやる。でも以前に感じていた覇気みたいなものが影を潜めてしまっているのだ。でも、その反面、少しだけ戻ってきて欲しくないと思う。


だって、だって。

私自身、認めるのは癪なんだけどシロウのことを気にしてるわけだし。

私としてはセイバーのことを美しい思い出ってことにしておいてもらって、そのうちこっちに靡いてくれないかなぁ、とか思っていたりする

あ、もちろんほんの少しだけど



「いや、珍しいものが見れた。そうして物思いに耽る姿は少女そのものだ」

少しの嫌味。その癖に気を悪くしない程度の気遣いの言葉。

こういうことをしてくる奴を私は知っていた



「勝手に人のことを覗き見しないで欲しいわね。アーチャー!」

振り返って、真っ赤な服を着た白髪頭を睨みつける



「フム、突発に対応できない性格は多少直ったようだな」

ニヤリって効果音がピッタリな笑顔で答えてくる



「当たり前でしょ、常に自分のことを研磨できない人間は魔術師となるべきじゃないわ」

本当は少し動揺してたけど、自分にしてはこれ以上無いくらいの対応だ

「・・・・・凛」

「何よ?」



「以前よりも良い女になったな」

あの、イヤラシイ笑い方しかしなかったアーチャーが、優しく微笑む



ボッカーン



辛うじて取り繕っていたものが一瞬にして砕け散った

「あぅ、あぅ」

もう、この後何を聞こうとしていたのかなんて、発想自体が何処かに飛び散った

「それと、凛、色々とすまなかったな」

固まっている私をアーチャーが優しく包む


もう、私のブレーカーは落ちる寸前、いや、ヒューズが切れて脳みそごと交換するまで立ち直れないかもしれない。

「わたし、謝られるようなことをした?」

なんとか、言葉を紡ぎ出す

「いや、私が謝りたいだけだ。君は間違わない、常に自信を持って良い。それこそが私のマスター遠坂 凛なのだから」

キュッと抱きしめる力が強くなる

あー、もう何がなんだかわからなくなってきた


「凛・・・・」

「なに?」



「君さえよければ、また契約して欲しい」

アーチャーが離れてそんなことを言ってくる


「契約って、私にどうしろって言うのよ?」

「令呪くらい、君なら何とかなるだろう?」



そんな風に煽てられたら、やるしかないじゃない

「いいわ、多少無理をするけど貴方と契約してあげる」



・・・・・この一件が私の最大の落ち度だった





「凛、どうした?」

「五月蝿いわね、契約したあとに気づいたのよ。あんたを養うのがどれだけ大変かって事を!」

今はまだアーチャーが必要とする魔力は少ない。世界からの供給もされてるらしいから普通にしてれば問題ないだろうけど・・・・


「これで私はマスターと繋がった。世界の供給が間に合わなかったときは遠慮なく魔力を使わせてもらおう」

契約後、最初にアーチャーが言った言葉。コイツ、私を魔力の予備タンクとして使うつもりだ。絶対そうだ。



「安心しろ、その代わりに君が危なくなったら優先的に助けてやる」

顎に手を当てて、さも当然と言い放つ

「アンタねぇ、また出会って早々に令呪を使って欲しいわけ!?」


「・・・・・・」

あ、アーチャーが気まずそうに視線を外した。

流石にアレには懲りたらしい。いきなり片付けさせたわけだし・・・・


「ともかく、私と契約した以上は一緒に戦ってもらうわよ?」

「それなんだが、暫くの間自由に行動させて欲しい。そうだな、四日といったところか・・・・」

「はぁ!?」



いきなり契約しろって言うわ、自由行動させて欲しいって言うわ、私をマスターと思っているのか!

「大丈夫だ、セイバーもいる。暫くは持つだろう」


・・・・・・

「あっ?」

「どうした?」

今になって気づいた。

どうやらさっきの一撃は思いのほか尾を引いていたようだ。

「私、貴方に何も説明して無いわよね?」

なのに、大体の事情を飲み込めてる事が信じられない



「それに、前回の記憶があるってのもおかしいわよね?」

「ム・・・・・」

「どうなの、答えて!」



「実は・・・・・・」

良い辛そうにアーチャーが渋々口を開く

「記憶喪失だ」

絶対コイツは私を馬鹿にしてる。間違いない。



「アンタねぇ!」

「大丈夫だ、今回宝具は忘れていない。それに、今の君に教える事は出来ない。これに関しては謝るしかないが・・・・」

申し訳なさそうな顔。何か、私には教えられない理由があるのだろう

「良いわ、今は聞かない。ただ、必要になったら令呪を使ってでも聞き出すからね」



アーチャーは「ああ」と答える

ついでに出た言葉が

「これからは飯とお茶の心配はしなくて良いぞ」

だった。

だから、アンタは茶坊主じゃないっつーの!













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