Sword Strike7




魔術師2


「で、話しは理解したが何で私たちが聖杯を手に入れなければならないんだ?」

三本目のタバコを灰皿で揉み消しながら橙子が聞き返す

「ふむ、御主たちには魅力が無いか」

顎に手で擦りながらゼルレッチとか言う爺様が答える

「当然だ、魔術師としても、人形師としても私は自分の力で上に上る。聖杯とやらの厄介になるつもりは無いさ」


聖杯、それは願いを叶えるものだと言う。でも、私も橙子同様、そんなものは欲しくは無い

「それじゃ、俺達の来た意味は無かったって事か」

つまらない。まったくつまらない。年末の忙しいこの時期に無駄な事をしたみたいだ。


「いや、そう結論を急ぐものじゃないぞ。式」

「参加するのか?」

コクリと橙子の顔が縦に動く

「魔法使いで吸血鬼の爺がいるんだ。報酬次第では参加しない事も無い」

「ほう、それは何かね」

ゼルレッチが聞き返す

「三つだ」

橙子が指を三本立てる

「私の存在を協会には内密にする事。鮮花に魔術を教えに来る事。そして・・・・・・願いを叶え終わった後の聖杯の破壊だ」

・・・・・・

「どういうことだ、最初のは分かる、二つ目の事も考えようによっては納得できなくは無い。だが、最後の聖杯の破壊は?」

「そうか、式にはわからないか」

小さく橙子がため息をつく



「えっと、申し訳ないんですけど俺たちにも何の事か・・・・・・今度のは本物の聖杯なんでしょ、それなら壊す必要は無いんじゃないですか?」

あちらの奴らにもわからないらしい。



「ま、お前らは仕方ないさ。対立してる立場だからな」

橙子は話を進める

「詳しくは、教会側の人間にでも聞いてみることだ」

そこで話が終わったのか、橙子は再びタバコに火をつける


「ちょっと、教えなさいよ」

ツインテールの赤いのが文句を言ってくる。

「嫌だ、絶対にお前みたいな奴は後々ゴネるからな」

一言で気って捨てる


「それでは参加で良いな」

ゼルレッチが問いかける

「ああ」

「俺は構わないぜ」

「私も問題ありません」

橙子、鮮花、俺が答える

「当然、私たちも問題ありません」

「・・・・・」

あ、士郎って奴が凹んでる。アイツは絶対付き合ったら尻にしかれるタイプだな


「本物の聖杯であれば、確実に破壊する。式もいることだし何とかなるだろう」

話し合いの最後に、橙子が自分を納得させるように呟いていた




騎士王3


「ふぅ。”ひこーき”とは予想以上に冷えるものなのですね」

以前シロウに聞いていた話とは大きく食い違っている。

”ひこーき”とはかなり快適だと言う話しだったが・・・・


「勘違いするなよ、我々は荷物置き場にいたのだ。本来人間が乗るべき場所ではないから空調が聞いていなかっただけだ」

むっ

「それでは、我々は荷物小屋に押し込められたと言う事ですか?」

アーチャーは「そうだ」と言って頷く


「貴方!」

目の前を歩く男を呼び止める

「なぁに?」

一緒に歩いていた女性が振り向いて答える

「貴方ではない。隣の男を呼んでいるのだ」

「・・・・・」


男は半身に構え、此方を覗くように見てくる

「セイバー、やめろ。無料で此処まで運んでもらったのだ。それに薄手とは言え毛布も渡してもらえた。感謝こそしても、文句を言うのは筋違いだ」

・・・・・

グッと拳を握る。

「・・・・・そうですね、確かに文句を言うのは筋違いでした」

悔しいけど仕方ない。無理を言って着いてきたのはこちらなのだから。

「でも、アーチャーも乗る前に教えてくれても良いのではないですか?」


「言ったら君は乗ったのか?」

私の性格は承知しているとばかりに笑いを浮かべてアーチャーが答えてくる

「それは・・・・・」

「さて、此処からはついてくれば良い」

アーチャーは身を翻し、飛行場の外に歩き出す



退魔師4


「それでは、此方にどうぞ」

若い男、名前を一成と言うらしい。

どうやら彼は退魔師としての訓練を受けていないみたいだ。

歩き方や動作からもそれは間違いない。

だけど、此処に残っている残滓が気になる。

それは黒、魔の力

そんなものを感じた。

「長旅お疲れでしょう、此方の部屋をご自由にお使いください」


襖の前で立ち止まる。

「それでは失礼します」

一礼をして部屋を去ろうとする少年



「一成さん、少しよろしいですか?」

月読様が彼を呼び止める

「は、は、はい!」

完全に硬直してる

「おい、そんなに緊張する必要は無いぞ。月読様はお優しいからな」

微笑んで、彼に声を掛ける

「そうだ、朱加の数万倍はやさしいよ」

ハァハァと息を切らせながら黒良が部屋に到着する

「なんだよ、だらしないなぁ」

少しだけ荷物を持ってあげる


「貴方たち、話しの腰を折らないように」

「「はい」」

月読様に注意されてしまった



「それで、ご用件とはなんですか。月読様」

「ああ、まずそれはやめてください。今回はお休みで寄っただけですから。私の事は紗那と名前で呼んでください。他の人たちも同様です」

「・・・・・」

顔を真っ赤にして黙りこくってしまう一成

「ほら」

紗那様が優しく微笑む。これで殆どの男連中は腰抜けになってしまう。

「はい、わかりました・・・・えっと・・・・・紗那様」

最後の方は消え去りそうな声で聞き取るのがやっとだった

「それで、用件は?」

「ああ、そうね・・・・ええと、私に聞きたい事があるんじゃないですか?」

「ッ・・・・」

ピクリと一成の体が硬直したように動く

「ありませんか?」

「いえ・・・・その・・・・・一つだけお聞きしたい事があるのですが・・・」

紗那様は人の心が読める。彼が何かを考えていたのを察知したのだろう

「それは貴方の話し?」

「いえ、知人の話ですが」

少し、紗那様が間をおいた後、静かに口を開く

「ならば、その方を呼んでください。直接お聞きした方が良いようですから。それではまた」

ニコリと笑って紗那様が部屋に入る

「す、すぐに呼び出します!」

数秒の沈黙の後、我に返ってドタドタと走って行く

「はぁ、アレ、今すぐにでも呼び出すつもりだな」

本当は散策とかしたかったのに。

「まぁ、仕方ないだろ。紗那様が決めたのなら俺たちは従うまでさ」



黒良は既に納得したようだ。それに名前で呼んでるし。切り替えの早い奴だ。

「そういえば、誠はどうしたんだ?」

紗那様付の使用人。私たちに近い立場にいる彼女は・・・・

「ああ、此処にまだ客が来るらしいからその出迎え」

そういえば、混血の一族で紗那様の知り合いが来るとか言っていたな

「そっか、それじゃ暫くは私達しかいないわけだな」

「そうね。誠もいないし、少し休みましょう」

既に動きやすい服に着替えた紗那様が部屋から出てくる

「ええ、色々と話を聞かせてください。去年、何があったのかを」

紗那様は「良いわよ」と微笑んで答えた。



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