思月空夢1


太陽が燦々と照りつける8月の中頃

夢の中で女性と出会った

その女性はアルクェイドと同じくらい綺麗だった

アルクェイドが西洋的な美人の象徴なら

その女性は東洋、日本的な美人の象徴だった。

年齢は僕と同じくらい

その女性は何か言いたげな悲しい瞳をしてずっと僕を見ていた。

それに耐えきれず

「どこかで合ったことある?」

と問いかけると

「紗那」

とだけ言われた

「それが君の名前?」

女性、いや紗那はこくんと頷くと霧のように消えていった。



「・・・時間です。」

「もうそろそろ起きないと間に合いません。」

隣からいつもの聞き慣れた声がする。

間に合わない・・・?

今は夏休みだから間に合わない事なんて・・・・

「あっ」

普段起床したときの気怠さなんて一発で吹き飛んだ。

そうだ、今日は全校登校日だ

夏休み中に一日だけ登校しなければならない日



ベットから飛び起き眼鏡をかけて時計を見る

7時

うん、余裕はあるみたいだ


「おはよう翡翠」

「おはようございます志貴様」

「すぐ着替えて行くから琥珀さんにご飯の用意をしてもらって」

「分かりました。それでは失礼します。」

と言った後思い出したように

「あと、秋葉様が居間でお待ちになってます。」

とだけ付け加えた



着替えを終えて居間に向かう

「おはよう秋葉」

「おはようございます兄さん」

ちょっと機嫌良く秋葉が答える。

「今日は機嫌が良さそうじゃないか」

と質問半分、冗談半分に聞いてみる。

「はい、兄さんが一緒に登校できる時間に起きてくれましたから」

とちょっと恥ずかしそうな顔で答える。

こっちも恥ずかしくて言葉に詰まる。



そのとき、琥珀さんの元気の良いの声が聞こえた

「志貴さん朝ご飯が出来ましたよー」

「それじゃ食べてくるからもう少し待ってくれ」

と言い残し食堂へ移動した。



「志貴様、秋葉様お気をつけて。」

「志貴さん頑張ってくださいね。」

翡翠と琥珀さん、二人に見送られ遠野の屋敷を後にした。

今、琥珀さんの言葉何か変だったなと思ったが

時間が時間だけに学校へ向かった。







「それじゃ帰りに校門で待ってるから。」

「はい、それでは兄さん」

と言い残し秋葉は校舎に入っていった。



教室に入るとこういうときだけ必ずいる悪友の有彦が

声をかけてきた

「よう遠野、朝から秋葉ちゃんと登校なんて

見せつけるじゃねーか」

「べつに見せつけてるわけじゃない

一緒に住んでるからだ。」

「それに秋葉は妹だ」


「おまえな、秋葉ちゃんが妹だって言っても

あんなに綺麗な子と一緒に登校してきたら

他の男どもは殺意が目覚めるぞ」

「特に金髪外人の彼女のいるやつが!!」

と涙を流して力説する。

「あーそー」

適当に返事して席に着く。



有彦は何か言いたげだったが

「まいっか」

と言って席に着いた



全校生を集めての校長先生の話も終わり、

ホームルームを聞いている最中に校門のあたりを見ると

どこかで見たような・・・と言うよりいつも見ている

メイド姿と着物姿の双子が立っていた。

何故? なぜ? ナゼ? ナゼ? 

「それでは残りの夏休み、羽目を外しすぎ無いように」

と言う言葉でホームルームは終わりを告げた

知らない間に担任の話は終わっていたらしい



「遠野これからつきあえ」

「そんな暇無い、忙しいから俺は帰る」

他の生徒にでも見つかれば大騒ぎになることは

間違いないのですぐにでも逃走しようと教室を駆け出す。



階段を飛び降り、廊下を走って昇降口から

飛び出そうとしたとき。

「遠野君廊下を走っちゃいけませんよ」

とシエル先輩に腕を捕まれた

「先輩ごめん、でも急がなくちゃいけないんだ」

腕を振り払って逃げようとすると腕に力が加わった

「それに、乾君に貴方を逃がさないように言われてますから」

「はい?」

そんなやりとりをしていると有彦が追いついてきた。

「さっすがシエル先輩、全力で逃げようとする遠野を捕まえられるのは

先輩くらいなもんですよ」

「ほめても何も出ませんよ」

僕を捕まえたのがうれしいのかにこやかにそう答える。

「それじゃ琥珀さんと翡翠ちゃんのとこいくか」

「おい、どういうことだ」

「聞いてないのか、お前の妹の秋葉ちゃんと

お前付のメイド翡翠ちゃん、あと琥珀さんの紹介を

してもらうって」

しまった朝琥珀さんががんばれって言ってたのはこのことか

校門まで二人に連れて行かれた。

「あー志貴さん遅いですよー」

「志貴様お疲れさまです。」

「二人ともこのことを知ってたの?」



「・・・・志貴様知らなかったのですか?」

「あはー知らなかったのは志貴さんだけですよー」

「琥珀さん、やっぱり伝えてなかったの?」

有彦が琥珀さんに質問すると

「伝えるわけないですよー

志貴さんに伝えたらその日から姿をくらますじゃないですかー」

うっさすが琥珀さん、こっちの行動パターンは熟知

しているようだ。

有彦も「シエル先輩に頼んどいて良かった」などと

ほざいてるし


「あれ、みんなって事は秋葉も知ってたの?」

「当然です。」

後ろから声がして後ろを振り向くと秋葉がいた。

(後ろに大人数を従えて・・・・)

「いつからそこにいたんだ?」

さっきからいましたとばかりに冷ややかな視線で

こちらを見る。

「秋葉も人が悪いな、知ってたら教えてくれても良いのに。」

「さっきも琥珀が言ったようにいなくなるってわかってて

言うはず無いでしょう。」

あきれたように言う。



そのまま僕はアーネルエンベに連行された


 




店の中央のテーブルに遠野家のポジションで座る

二人用の席に俺と翡翠、対面に秋葉と琥珀さん。

さらに俺の隣には2人用テーブルを付けてシエル先輩と有彦が座る。



「志貴様何か頼みますか?」

「特に無いから任せるよ。秋葉はどうする?」

「私も任せます。琥珀お願い」

「わかりましたーちょっと待っていて下さいね。」

「・・・・・・・・」

「お待たせしましたー」

「志貴様お砂糖はいつもどおりでよろしいですか?」

「うん、頼むよ。」



「おい、遠野周りを無視してなに団欒してんだ」

「早く紹介をしろ」

有彦に言われ周りを見渡すと女性は憧れるような目で、

男は殺意をまとった目でこちらを見ていた。



「それでは兄さんお願いします。」

「みんな知っていると思うけど妹の秋葉だ」

「遠野秋葉です。」

ゆっくりと頭を下げる

みんな羨望のまなざしで見ている

何たってお嬢様だもんな



「次は俺専属のメイドの翡翠だ」

「翡翠です、志貴様の身の回りのお世話をしています」

ぺこりと頭を下げる。

「おい、メイドだよ」

「お世話ってあんな事やこんな事をしてんのか」

などと宣って大騒ぎしている輩に殺意を覚えつつ

「最後は秋葉の専属メイドの琥珀さん。

「あはーこんにちは皆さん」

「ちなにみに翡翠と双子で琥珀さんがお姉さんなんだ。」

と付け加える。

「以上で紹介は終わり、みんな後は自由だぞ」

と言う有彦の声で秋葉たちにみんなが話しかける。

三人とも質問攻めにあってあたふたしているのでこっちは蚊帳の外になってしまった

一息ついて紅茶を飲み休んでいると

「みんな他の人に取られちゃったみたいで寂しいですか?」

とシエル先輩に声をかけられた。

「そんなこと無いですよ」

「うるさいのがいなくてゆっくりしてられますから」

なんて強がりを言うと「ふーんそうですか」なんて笑いながら

先輩も有彦と話を始めた。


「ふう」

とため息をついてゆっくりしようと思ったのもつかの間

「やあ、遠野君探したよ」

なんて声をかけられた

見ると黒桐幹也さん、両儀式さん、アルクェイドの

珍しい取り合わせで僕の前にたっていた。

「どうしたんですかこんなところに、

しかも僕を捜してたんですか?」



「うん。彼女が君を捜していたからね。」

黒桐さんが答えると横にいた両儀さんが

「違うだろ、いきなりこいつにおそわれたんだ。」

とアルクェイドをにらんだ

「ホントかアルクェイド?」

「えー違うよ、志貴と雰囲気が似てたから間違えて

抱きつこうとしただけだよ」

なんて悪気もなく答える。



「あんな勢いで抱きつく奴がいるか

あれは襲いかかるときの早さだったぞ」

「いや、両儀さんアルクェイドはそれが普通だよ。」

何度も体験している自分としては普通になっていたが

他の人から見ればそう見えると思う。

もちろんもう少し手加減を覚えて欲しいのだが・・・

「お前、あんな勢いで抱きつかれて大丈夫なのか?」

疑いの目で見ながら両儀さんは聞いてきた。

「うん、もうなれた」

正直に答えると

「案外丈夫なんだな」

なんてあっさりと言われてしまった。

「兄さん!!」

「ど、どうした秋葉」

いきなり怒鳴られて驚きながら返事をする。

「どうしたじゃありません紹介した後こっちを無視

して仲良さそうに話してるなんてどういうことです」

眉毛をつり上げて怒っている秋葉

「ちゃんとお前たちを紹介だろう。」

「そんな事じゃなくって・・・・」

秋葉は困った顔で言葉を濁した。

「秋葉様は予想外に志貴さんが持モテるんで不安になったんですよ」

琥珀さんが答える

「そうなのか秋葉」

「そんな訳ないでしょう」

「それより兄さん、私の知らない方々ですね」

「しかもずいぶん仲がよさそうですし、女に飽きて男の人にも手を出し始めたんですか」

おい、自分の本心がばれそうだからってなんてこと言うんだ。

しかも両義さんには禁句の言葉を…

両義さんは懐に手を忍ばせて戦闘モードになってるし

本気のアルクェイドと戦って生きてた(辛じてだけど)

両義さんに襲われたら秋葉でも死ぬぞ

俺と同じ直死の魔眼持ちだし

こうなったら俺が本気モードで止めるしかないか

そう決意してメガネを外そうとする

「「やめてシキ」」

アルクェイドと黒桐さんの声がかぶった。

それで両義さんの殺気は消えた。

後は秋葉だけだ

「秋葉、両義さんはれっきとした女の人だよ」

やんわりと秋葉に言う

「両儀・・・あなた名前は」

「式だこいつと字は違うがな」

「両儀式って両儀家次期当主の」

秋葉が驚いてる知らないんじゃなかったのか

「なんだ秋葉、両義さんの事知ってるんじゃないか」

「兄さんは本とに朴念仁ですね」

なんて皮肉が返ってきた。

「以前言いませんでしたか」

「両義、白純、巫浄、浅神、七夜は私たちの家系は禁忌とされてるって」

そう言えば聞いた事あったような

「へえ遠野て聞いたけどこいつは違うと思ってたのにな」

「俺たちの家系が黙認してる外道の家系だったのか」

俺んちってそんな家系だったのか?

それよりヤバイぞこの人たちシエル×アルク並の敵対関係らしい

「やめろって式ってば、秋葉さんも何とか押さえてください」

そこに黒桐さんが入ってくる

そこで二人とも殺気が消えた

前にも思ったけどこの人の落ち着いた雰囲気のおかげだな

俺と一緒に住んでくんないかな

「黒桐、こいつらを連れてくのはヤバイぞ」

「しょうがないだろ燈子さんの指示なんだから」

嫌な予感がする、何だろう

「遠野くん、君を探してたのも事実なんだ

燈子さんからの正式な依頼だよ」

以前貧血で倒れた僕を介抱してくれた伽藍の洞の人たち

そこに喧嘩売って倉庫ひとつと結界ワンセットぶっ壊した

人外二人、この責任で少しの間伽藍の洞でバイトする羽目になったんだ。

「分かりました、すぐ移動ですか」

「いや明日の早朝だよ、行き先は裏高野」

「朝7時に伽藍の洞に来てくれ」

・・・両義さんが言った意味がわかった

裏高野といえば日本の退魔組織の本拠地だ

シエル先輩はともかく吸血鬼と人外の血の入った人間が

入って言い場所じゃない

まあ実は僕は違うんだけどね。

「遠野も客が来て忙しくなったからお開きにするか。」

有彦の声でみんな解散する。

「じゃあ僕たちも帰るよ今回は戦闘用の準備をして来いって言ってたよ」

黒桐さんたちも店を出ていった。

今まで仕事場の見張りだったのに

どうやら結界が出来あがって本格的に動き出すみたいだな

「遠野くん依頼ですか」

シエル先輩が聞いてくる

「はい、今回は準備もして来いって言ってました」

「アルクェイドもだぞ」

念を押して言ったら

「言われなくても志貴といっしょにいるから大丈夫だよ」

なんてとぼけた返事が返ってきた。

「兄さん、その二人と旅行に行くんですか」

意味不明な質問が来る

「ちがう、あの人たちに以前俺たち三人が迷惑かたから

責任とって頼み事聞いてるだけだ」

「そんなの関係有りません」

「その二人と出かけるのが問題なんです」

何とか秋葉を説得しようと悩んでいると

「秋葉さんも来て良いですよ

ついでだから琥珀さんたちにも来てもらいましょう」

あんた道連れ増やすんかい

何かたくらんでるような顔してるし

こうなったらもうなるようになれ

「うんみんなで行こう」

「二人とも明日は早いから準備が終わったら家に来てくれ」

「今夜はみんなで夕食を取ろう」

秋葉を見るとしぶしぶ「良いですよ」と答えてくれた

「それじゃ帰るか」

僕たちは家路につく事にした。




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