思月空夢2

アーネルエンベを出た後、僕たちは家路につくことになった

秋葉たちは楽しそうに話していたが

僕はさっきの話が気になっていた


戦闘準備をするように言われているにもかかわらず

シエル先輩は秋葉たちを連れて行くと言った

確かにアルクェイド、シエル先輩、両儀式、青崎燈子

確かにこの面子がそろえばよほどのことがない限り守れるだろうけど



「なあ、秋葉やっぱり危険だから家に

残っていてくれないか」

「しつこいですよ、兄さんが大丈夫なら私たちがいても問題有りません」

「むしろ兄さんよりも役に立ちます」

もはや何を言っても無駄か・・・

「秋葉、誰かに”逃げろ”って言われたら必ず逃げるんだぞ」

「でも兄さん」

「約束できないんなら絶対に連れていかない!」

自分でもわかる、強い言い方をしてる

秋葉は一瞬驚いた後下を向いて泣きそうな声で返事をした。

「・・・分かりました」



「あっ・・うん分かれば良いんだ

強い言い方をして悪かった、でも秋葉には

危険な目に会ってほしくないんだ」

「ほら、二人とも明日は楽しいお出かけなのにそんな

気持ちじゃダメですよ」

琥珀さんがメッと僕達を見て怒ってる

「ええ、そうね兄さんとのはじめての旅行ですものね」

目に涙をためた秋葉が笑顔で明るく答える

そう言えばみんなで何処かに行くなんて始めてだったな



やっと何処かに行く機会が出来たのに自分は秋葉に”来るな”って言ってたんだ

そう言えばみんなに迷惑をかけっぱなしでなにもしてなかった

危険でも一緒に出かけられる事が秋葉には嬉しい事だったんだ

「すまなかった秋葉

せっかくの機会だもんなみんなで出かけよう」

自分の出来る最高の笑顔で言葉をかけると

さっきまで泣きそうだった秋葉の顔は本当に嬉しそうな笑顔になった

「まったく現金な奴だ」

本当はきちんと誤りたかったけど恥ずかしいので

憎まれ口を言ってしまった

「志貴さんも結構強情なんですねー」

うん、琥珀さんの言う通りかも知れない

だから心の中で謝った

”おまえの気持ちも考えずに勝手なことを言ってごめんな秋葉”


まもなく家の門が近づいてきた

「今日は長い一日だったな」

明日から始まるであろう長い一日を憂いながら

自然とひとりごとが出てしまった




僕たちはアーネルエンベから伽藍の洞へ向かっていた

「なあ黒桐、あいつ本当に遠野家の人間なのか」

隣を歩いている式が訪ねてきた

「あのバカ女がお前と間違えたって言ったが俺も同感だ」

「遠野の家は人外の血が入っているらしいから

あんな雰囲気の人間がいるとは思えないんだがな」

側にいて安心できる心地よさは黒桐幹也と酷似していた

「そうかな」

確かに遠野君は優しい雰囲気を持っていて

人と在らざる者の殺伐とした気配は無い

妹さんの方がその気配は強いと思う



「確かに遠野君はこっち側の人間に見えるけど

実際の雰囲気は君の方が近いんじゃないかな」



式の形容しがたい危うさはどこか似ているように感じた

「俺とあいつは似ているようには思えないけどな」

何故か式は否定的だ



程なくして伽藍の洞に着いたが僕達の議論は終わらなかった

「どうした二人とも産まれてくる子供がどちらに似てるか

話してるのか」

いきなり爆弾発言をした燈子さんのせいで議論は答えのでないまま

止まってしまった

目を向けると鮮花から恐ろしいほどの殺意が向けられている

「違うんだ鮮花」

「なにが違うんですか」

「燈子さんは勘違いしただけで僕たちが話してたのは

遠野君の雰囲気がどっちに似てるかって内容だよ」



鮮花の疑いは晴れたが燈子さんが

興味を持った目でこちらを見ている

「それはお前達二人が話していても答えは出ないだろうな

鮮花お前はどちらに似ていると思う」

「・・・どちらにも似ていてどちらとも違うような

感じで、どちらとも言えません」



「私も同感だ、これで答えが分かったろう」

「分かりません」

燈子さんの話が理解できずにそう答えると

いつも通り解説が始まった。



「黒桐、原色の赤と青を混ぜると何色になる」

「紫ですけど何か関係があるんですか」

「話は最後まで聞け」

燈子さんはタバコに火を付ける



「では、紫と赤を青いサングラスをかけて見るとどうなる」

「うーん、同じ紫色に見えるんじゃないですか」

「その通りだ、つまり例えれば遠野の雰囲気が紫として

お前が青、式が赤だとする」

「私たちが見れば鮮花が答えた様になるが

お前達の場合は相手と同じ様に見えるんだ」



「何故ですか」

意味は理解したが理由が分からず聞き返す



「自分と同じ雰囲気は感じ取れないものなんだ

似ていれば似ているほどな」



「だから当人同士からすれば自分とは違う部分を感じ取り

それを相手の雰囲気と感じる

多少似ていると思ってもそれは自分とは違うものなんだ」

「つまり、他人の雰囲気なんて曖昧なものは議論に値しない」

話の最後にきつい言葉を言われた。



「ところで燈子さん、今度の仕事はどんな内容ですか

僕も内容は聞いてないし遠野君達を呼ぶ程のことなんですか」

燈子さんに問いかけた



「今回の内容は魔術的な品物の始末だ

あいつらにも関係はある

・・・と言うかあいつらのせいで事態が悪化したと言って良い」

「それはどういう物なんですか」



「以前荒椰の作ったビルがあっただろう」

式が捕らえられ、僕が満足な足で最後にいた場所

「あそこにいたアルバという奴が作った物なんだが」



話を聞くと

アルバという人は何度も死を迎える人を利用して

陰陽道で使用される呪いの品物を作ったらしい

髑髏に死んだ人の負の感情を集め呪いを行う品物で

現在は禁忌とされるほどの秘術だという。



「その呪いで私を殺すつもりだったのかもな」

「そんなにやばい物なんですか」

「あれ位の高レベルなら司祭クラスでも呪い殺せるからな」

教会の人は加護を受けていて呪いは効かないはずだ

その中でも高位の司祭と呼ばれる人を呪えるだけで

その品物がどんな物か分かる



「ただ、普通あそこまで負の力を集めるには何十年もかかる

その前に退魔機関が来て破壊されるんだ」

「何で今回は破壊されなかったんですか」

そんなやばい物を日本の退魔機関が放っておくはずがない



「今回は力が集まるのが早かったんだ」

「あのビルでは毎日無念の死を遂げる人が大勢いたし

なにより吸血鬼騒ぎで一気に増えたからな」

以前、隣町で血液を抜かれた死人が何人も出たり

ホテルの人間がまとめていなくなったりしてニュースになっていた



「あれってホントに吸血鬼の仕業だったんですか」

「ああ、私も最近知ったが真祖の姫と代行者の他に蛇と死徒二十七祖が一人

居たらしい」

「これは裏の戦争が始まってもおかしくない面子だ」





「以前その人達は聞きましたが蛇って言うのは聞いたことがないんですけど」

「蛇というのは自分を保持しながら転生する死徒だ

私も詳しくは知らない、知りたければ代行者にでも聞け」



「燈子、俺はもう寝るぞ」

話の区切りで式がそう言った

鮮花も眠くてウトウトしている

「残念だがここで開きだな」

燈子さんも寝る様だ

どうやら真剣に話を聞いてたのは僕だけだったらしい



時計を見ると十二時を回っていた

ソファーに寝そべり意識がまどろむ中

少しだけ今日のことを思い返してみた



遠野家、人外の血を受け継ぐ血統

しかし遠野 志貴にはそんな雰囲気はない

真祖の姫と埋葬機関に好かれている

二人が争ったら鮮花と式よりすごいんだろうな

僕はまだいい方か・・・・・・







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