思月空夢3


暑い、夏だからって朝からこの暑さは異常だ

その暑さで目が覚めた



脇に目を向けると

右側にはアルクェイドの寝顔がある

左側にはシエル先輩の寝顔がある

・・・・・・

「二人とも何で俺のベットで寝てるんだよ!!」

つい大声を出してしまった

どたどたと階段を駆け上がる音と共に

秋葉の叫び声が聞こえる。

「兄さん」

ばたんと部屋のドアを開ける音で二人が目を覚ます

「おはよー妹」

「おはようございます秋葉さん」

何事もなかったかのように二人が挨拶する。



見るとアルクェイドは下着に大きなワイシャツ(俺から奪い取った)

シエル先輩はシルクのパジャマ

こんな状態でなければうれしいんだけどな

「何であなた達は客室で寝てないんですか」

怒りのこもった秋葉の質問に二人は悪気もなく答えた

「いつも寝てる所の方がいいから」

「アルクェイドが悪さしないようにです」

秋葉の眉毛が一気に釣りあがった

「そんな答えがありますか!!

兄さんも兄さんですこんな人達が隣にいたら

窓から捨てれば良いのに」

そんな事出来るか!!

大体寝てるのにわかる訳無いだろ

「文句でもあるんですか」

文句を言おうとするが

先に秋葉の言葉で黙らされてしまった

このままではまずい怒りに任せて

何をされるかわからならい

「志貴様、起きていたのですか」

ちょうどいいタイミングで翡翠が着替えを持ってきてくれた

「着替えるからみんな外に行ってくれ

それと、俺が降りていく間にみんな仲直りしておくんだぞ」

秋葉たちは渋々と部屋を出ていった

「全く、朝から勘弁してくれよ」

自然とそんな言葉が出た

あの三人はなにかと言うと争ってる

今朝もまた然りだ

乱闘にならないだけましかもしれないけど



居間に行くとみんながそろっていた

「おはよう」

声をかけていつもの席に座る

「志貴さん、あまり時間がありませんよ

紅茶を飲むなら急いでください」

琥珀さんに言われて時計を見るともう六時を回っている

ほとんどこんな時間に起きたことのない自分にとっては奇跡に近い

ある意味アルクェイドとシエル先輩のおかげとも言える

そんな事を考えつついれたてのあつい紅茶を急いで飲み干した

「それじゃ行こうか」

「外に車を用意してあります、先に乗っていて下さいね」

門のところまで行くとリムジンが止まっていた

「それじゃ出発しますね」

琥珀さんが運転席に乗り込む

「それじゃ出発します」

車が走り出し僕達は伽藍の洞へと向かう






待ち合わせの時間に伽藍の洞に到着した

途中景色が横に流れたりしたおかげで時間に間に合った

車をから降りるとビルの中から黒桐さんが出てくる



「皆さんおはようございます」

「あちらに留まってるバスで出かけるので荷物を移しておいてください」

そう言って黒桐さんは琥珀さんにカギを渡した



「あと遠野君、燈子さんが話あるそうだから事務所に行ってね」

「はい」

事務所に続く階段を上っていく

トラップが仕掛けられているので寄り道はしないように言われた



事務所にはいると両儀さんと鮮花さんが荷物をまとめてる

「じゃ燈子先に行ってるぞ」

両儀さん達が荷物を持って事務所を出ていく

「おはよう遠野」

「おはようございます燈子さん、話ってなんですか」

燈子さんはたばこに火を付けに話しかけてきた



「お前は自分が遠野家の人間じゃないって知ってるか」

「どうしてそのことを」

あまりに突然な質問にそう答えるのが限界だった

「今回の依頼者から聞いた、安心しろ他の奴は誰も知らない」

ふう、と紫煙を吐く



「知っていて良かったよ知らなかったら

迷惑をかけるからな」

「旧姓は七夜だって

式とも何度か会っているそうだぞ」

「そうなんですか」

僕は8才以前の記憶がほとんどない

「式も少し記憶に障害があってお前のことは気づいてないようだ」

「今回は後で話す依頼の他にその眼鏡に手を加える」

「なんでですか、今のままでも問題ないですけど」

疑問に思い聞いてみた。

「“今は”な、二人の話だと七夜の血が目覚めると眼鏡をかけてても

死が見えてしまうそうじゃないか」

シエル先輩とアルクェイドが教えたのか



確かに以前戦ったとき眼鏡をしていても

壁やビルの死を捕らえてしまった

「直死の魔眼と言っても経験で見える”死”のレベルが違うようだ

式は“生きてるモノ”なら神でも殺すって

豪語してるけどお前は”この世に在る物”なら世界すら殺せるんだろ」

「式もモノの線くらいは見えるらしいがね」



確かに躊躇しなければ鉱物や概念自体の死点が見える

まあ、脳の血管が切れる寸前だけど・・・





「まあ話はそんなところです

みんな待ってますから行きましょうか」

燈子さんは眼鏡をかけた

以前性格が変わるって黒桐さんは言ってたけど

ホントに変わるんだな



外に出るとみんな準備が終わってバスに乗っていた

どうやら運転は黒桐さんがするらしい

失礼だけど琥珀さんや燈子さんよりも

安心できる



バスの中はテーブルがあり、囲むように席が並んでいた

燈子さんの話では絶対に席順でもめるのでこれにしたそうだ。

現に自分の両脇に誰が座るかでもめたくらいだから

二人用の席だと乱闘すら起きかねない

その結果ジャンケンで勝った翡翠と琥珀さんが両隣に座っている

「それじゃ出発します」

黒桐さんがそう言ってバスを出発させた





しばらくして志貴さんが声をかけてきた

「秋葉、鮮花さんと知り合いだったの」

「ええ学園同士の交流会で知ってましたから」

秋葉さんが答える

「じゃあ鮮花さんの家もお金持ちなの」

「・・・・」

確かに私の学校は世間じゃお嬢様学校って呼ばれてるし

確かにお金持ちの娘の方が圧倒的に多く

自分のように成績を買われて傭兵している人はほとんどいない

でも面と向かってそんな無神経なこと言ってくるなんて

この人は何を考えているんだろう


私は”そんなにお金があったら兄さんが

こんなところで働く必要あるわけないでしょう”

ぐらい言ってやりたくなったけどその後

燈子師に何を言われるか分からないので

「そんなつもりはありませんが世間ではそう呼ばれてます」

本心とは裏腹にそんな返答を返した

こんな話もう終にしてほしい

話が続くとからかわれる標的となってしまう



「その中でも鮮花さんは成績優秀なのよ」

燈子師が誉めてくれた、珍しい事もあるもんだ

だけどこちらを見て笑っている燈子師の目は

”そう簡単に終わらせるか”と言っているように見えた

私の考えている事は分かっていたらしい

ともあれこれで私の話が終わるのは当分先になった




志貴さんが唐突に燈子師に聞いてきた

「気になってたんですけど何で鮮花さんは燈子さんの事務所にいるんですか

アルバイトって訳でもなさそうだし」

燈子師が答える

「鮮花さんは私の弟子なの

結構魔術が使えるようになったのよ」

いきなりぶっちゃけかい

「つまり、貴方と鮮花さんは魔術師だと言う事ですか?」

ああ・・・秋葉さん私を怪しい目で見ないで

魔術師は本当にいるんです

決して電波を受けてたりメルヘンの世界へレッツゴーしてるわけじゃないです

翡翠さんと琥珀さんが信じられないと言った顔をしている

「そう、でどんなことが出来るのかしら」

秋葉さんは何事も無かったように話を続ける

あれ?

てっきり「貴方白い薬でもやってるの」とか

言われるものだと思ってたのに

でも疑いの目は変わってない

つまり私が本当の魔術師か疑っていたと言う事か

ここは正直に答えたほうがよさそうだ

「発火を多少、あと燈子さんの使い魔も操作するくらいは出来ます」

「へえ、魔術が貴方の年で使えるなんてすごい才能ね」

良かった、秋葉さんが信じてくれた

「おい秋葉何の疑問も無いのか」

秋葉さんが魔術師を認めているのが志貴さんは不思議らしい

まあ普通はそう思うでしょうね

「ええ当主として裏の話しも聞きますし

魔術師は良く出てきますから」

秋葉さんはさらりととんでもない事を言ってのけた

遠野家はいったいどうなっているんですか

遠野グループの裏側っていったい何があるんですか


「妹、魔術師の中にもランクがあるの知ってる

そのランクの中でも最高位の人は封印指定って言うのよ

燈子はその封印指定の魔術師なの」

「まったく、何度そう呼ばない様に言っても貴方は聞いてくれないんですね」

秋葉さんが呆れてる

「まあ良いです、それより何で封印指定と呼ばれるんですか」

「一つの技術で並ぶモノがいない人に与えられる称号で

その技術を保存するために封印される

と言う理由が通説でしょうか本来はどうか知りませんけど、

それに常識が欠落した人でもありますね」

シエルさんが失礼なことを付け加えて答える



「そんな規定項目はないですよ」

燈子師は弁解するが

私はシエルさんと同意見だ

式とも珍しく意見が一致したらしくうなずいてる



「それよりも秋葉さんのお兄さんが貴方だって聞いて驚きました

もっと怖い人かと思っていたので」

燈子師が一瞬たじろいだ隙に他の人に話の矛先を変える


実際、兄さんに志貴さんの妹が秋葉さんだって聞いて驚いたんだ

だって秋葉さんからお兄さんを想像すると見た感じからして怖い人

だろうなって思っていたんだから

「んー志貴は怖いと思うけどな」

アルクェイドさんが答える

「そんなことはないだろう」

志貴さんが否定する

確かに私もシエルさんやアルクェイドさんの方がよっぽど怖いと思う



「いえ、伽藍の洞の人たちは本気の遠野君を見てないから

そんなこと言えるんですよ」

「本気になった遠野君は私でも怖いです。

それに本気の遠野君には勝てるか分かりませんから」

「だから遠野君を本気で怒らせるようなことをするには

相当勇気がいりますね」

シエルさんもアルクェイドさんと同意見らしい






おとなしく話を聞いていたが

こればかりは信じられない

「こいつはそんなに強いのか」

アルクェイドに聞きなおしてみる

見た感じ細身でおとなしそうな遠野 志貴と言う人間は

幹也と同じで戦いに向いているようには思えない

シエルが答えてきた

「そうですね、遠野君もかなり強いですが

技術云々であれば両儀さん貴方の方が強いでしょう」

「ですが遠野君には不意打ち・・・と言うより虚をついた攻撃がほとんど通じないんです

ですから殺し合いと言う面で見れば遠野君に勝てる人は数える程しかいませんよ」

それは確かに

相手の隙をつけなければ正面からの力押ししか手だてがない

しかし相手は直死の魔眼を持っているため圧倒的な差が

無ければこちらの隙をつかれて殺される



「へえ、人間てのは見た目じゃ判断できないって事か」

ふと幼い頃の思い出がよみがえる

七夜と言う家の息子で幼い頃一緒に修行したことがあった

いくら巧妙にフェントをかけても見破られ打ち込まれた

常に集中していなければすぐに負けてしまうのだ

そのころは幼い故に技術がなかったと思っていたが

今思えば本能でそれを察知していたのかもしれない



「そろそろ着きますよ」

到着した場所は観光地となっている大きな神社で

黒桐の話しだとここから歩いていくそうだ


昼食を取り待ち合わせの場所に移動すると

女性が待っていた

女性は細身で身長は170と言ったところか

「お待ちしておりました、案内をいたします誠(マコト)と申します」

「それでは参りましょうか」





目的地に向かう道は獣道のようで歩きづらい

後ろを見ると秋葉がつらそうに歩いている

その隣で琥珀さんが秋葉を支えるように歩いている

気になって秋葉達の所に戻る

「大丈夫か秋葉、つらいなら少し休んでも良いんだぞ」

「・・・・・」

秋葉は返事すら出来ないらしい

「渡し忘れていました秋葉様、この護符をつけて下さい」

いつの間に戻ってきたのか誠さんがいた

誠さんは敵を見るような目で秋葉を見ている

シエル先輩とアルクェイドのように気に入らないと言うレベルでなく

憎悪と言っていいほどだ

「誠さん、この護符は何」

「固有結界の印の入った護符です」

「もう高野山の対魔結界に入っているので結界の影響を受けなくするためです」

「遠野の血が強い方は下手をすれば命を落としてしまいますから」

視線を秋葉に向けたまま誠さんはそう答えた

言葉使いから敵意は秋葉のみに向けられているのが分かった

自分を敵視していないことから誠さんは自分ではなく秋葉を敵視しているようだ

「志貴おそいよー」

アルクェイドやシエル先輩達もこちらに戻ってきていた

「秋葉の調子が悪そうだから休んでたんだ」

「いえ、もう大丈夫です兄さん」

護符のおかげか秋葉も持ち直したようだ

「それじゃ先を急ごうか」

秋葉が心配ではあったけれど誠さんと距離を取ってもらうため先を急ぐことにした



もう1〜2時間歩いている

シエル先輩、両儀さん、アルクェイドが誠さんと先を行く

アルクェイドに結界の影響がないか聞いたら

「体が重いけどシエルくらいは倒せるよ」

なんて言われてアルクェイドが普通とは違う事を改めて思い知った

「普通ならこの結界に触れることも出来ないんですよ」

シエル先輩も怒るのを忘れて呆れてる

それよりも僕の体のほうが心配な様だ

「遠野君の方こそ大丈夫ですか」

「ええ、何故か分かりませんが大丈夫みたいです」

本当に絶好調と言えるくらい調子がいい

運動しても倒れないくらい調子のいいときはあったが

これだけ歩いても目眩一つ起こさないのは事故にあってから初めてだった



少し先で誠さん達が待っていた

みんなが追いつくと

「これから結界を開けます」

と告げて何か唱えた



周りを見渡すと先ほどまで無かった道があり

少し先に大きな建物がたっていた

みんな建物の大きさに感心していたが

一人だけ違う事に感心してる人がいた

「私の術よりも強力ですね

気づかせないを通り越して認識すらさせないなんて」

そう、燈子さんは結界の方に興味示している


新しく出来た道を歩き僕たちは目的地に着いたのだった



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