思月空夢5

休憩が終わり、さっきの約束通り模擬戦をすることにした

みんなも興味があるらしく観戦することにしたらしい

武器は自由との事だ

目に付いた小型の竹刀を手にとって軽く振り回してみる

「俺はこれにする」

ナイフよりも長いがそれほど違和感は無い

遠野も同じ物を手にしている

あいつも得意な獲物は同じようだ



「式、やりすぎちゃだめだよ」

幹也が注意する遠野が怠っていなければやりすぎることはないのに



「兄さん、遠野家が両儀家に劣るようなことは無いですよね」

秋葉がきつい檄を飛ばしてる

「出来るだけやってみる」

ほう、俺に勝つつもりか

それだけの実力があるか試してやる



審判役の誠が合図する

「始め」



先手必勝、合図と同時に攻撃を仕掛ける

まずは遠野志貴という人間の能力を試す

「はっ」

一呼吸で攻撃できる最速の一撃で相手の胸をねらう

「うわっ」

こちらが腕を伸ばすと同時に遠野は横に飛ぶ

「へえ、今の攻撃をかすりもしないとは腕はなまってないな」

「・・・・・」

遠野からの返事はない

少しカチンと来た

だけど熱くなってはいけない相手があの七夜であれば

一瞬の隙が敗北となる

今度はコンビネーションで捕まえられるか試す

横に払う斬撃

その勢いで蹴りを出す

遠野は斬撃を受け流し蹴りを防ぐがバランスを崩す

「隙有りだ」

さらに勢いで裏拳をこめかみに叩き付ける

ぎりぎりでかわされるが眼鏡をはじいた



目を怪我いていないか心配だったが

それを察知したのか遠野はこちらを見て

「心配ない続けよう」

抑制した声で答えた

うん、昔のこいつに戻ったようだ

戦う時のこいつは氷の刃のような冷たさと危険を感じる

それでこそ私も本気を出せる



「!」



一呼吸おいて胸を狙った突きがくる

体をひねってかわすが脇腹を掠め着物が破ける

後ろに飛び相手の隙を窺う

相手も同様にこちらを窺っている

動きのすべてが速いわけではないが

時折見せる一瞬の動きは異常なほど速い

通常の緩やかな動きのせいでタイミングを読むのは難しい



「くっ」

さらに後ろに飛び退く

・・・畜生フェイントなんて使いやがって

あいつの攻撃を見てからの回避は危険が伴う

だから安全策を取っていたが見ぬかれたらしい

手抜きはするなと言うことか





「いいぜ、とことんまで付き合ってやる」

私は一足で五メートルほどの距離を詰め袈裟切りに竹刀を振り下ろす

「痛っ」

あいつも相当驚いたらしい

反応が遅れ胸の辺りの服が裂け血が滲んでる







楽しい、興奮している

一瞬の判断が

勝ち負けを決めるこんな緊張感は久しぶりだ

そして掛け値なしの全力で戦える相手

これは至福の時と言える





先ほどの攻撃でこちらの間合いが分かったのか

約5メートルの距離で様子を覗っている



・・・・一分たっただろうか

時間は定かじゃないが長い緊張が続いた

隙を窺う遠野の目が青く見える

それが一瞬輝いたように見えた

「!!」

その瞬間私の動体視力ぎりぎりの速度で遠野は私の後ろに移動してきた

瞬間移動でもしているのかと思うほどの動き



振り向くと同時に竹刀を打ちこんで来る

流れに任せそのまま横に飛び退くがまた着物が切られる





隙が見えた

ここが勝負どころだ

打ち終わりを狙い右肩を突く

手応えあり

「ぐあ」

そのまま竹刀を横に払う

「くっ」

相手の体制から見てこれは避けられない、私の勝ちだ

その油断に一瞬集中がとぎれてしまった

竹刀が当たる瞬間遠野が消える

いや、集中が鈍ったため遠野の動きを追いきれなかった

あいつはバランスを崩したまま全力でこちらの後ろに飛んだんだ





「勝負あり」

誠の声が響く

気づいたときには首筋に竹刀が突きつけられていた

「くそ」

自分の甘さについ言葉が出る

さっきの攻撃が避けられないのはあくまで普通の相手であり

こいつみたいに常人を超える能力の人間には避けられる可能性があった

「最後油断しただろ」

遠野は竹刀を納めながら口を開いた



「ああ、お前があそこから動けるとは思わなかった

まったく、この常識はずれ」

皮肉を返すと遠野は困ったような顔をした



「志貴、目は大丈夫なの」

アルクェイドが話しかけてきた

「ああ、ケガはない

それに死の線も見えないって訳じゃなくて見えても不自然じゃないんだ

そこに有るのが自然な形でいやな気分はしない」

まあ、頭痛はするんだけど



「まあな、紗那は不自然さとか偽りが大嫌いなんだ

だからここまで調和した世界を作ったんだろ」

「死はあくまで自然の理の一部だからな」

と両儀さんは教えてくれた



「それにしてもみんな大人しいじゃないか

始まる前はあんなにはしゃいでたのに」



アルクェイドがシエル先輩に同意を求める

「だって・・・ねえシエル」

「はい、眼鏡を外したあとの遠野君はアレなときの雰囲気だったんで

声をかけたら狙われそうで怖かったんです」



二人はいつも通りにしているが

秋葉達は顔を青くしている

「直死の魔眼を持っているとはいえ不安だったが

式から一本取るとはな、うちに就職しないか」

燈子さんは楽しそうに話しかけてきた



「遠慮しておきます、僕は普通に暮らしたいんです」

「ほう、あの二人と一緒にいて良くそんなことが言えるな」

「遠野、そんな無駄話より二本目をやるぞ」

両儀さんが燈子さんとの話を打ち切って二本目を告げる



結局日暮れまで模擬戦をした

二本目から遠野は眼鏡をしていた

眼鏡を外した方が動きがいいのだが

秋葉達が怖がっていたのでお仕方なく許してやった



ちなみに最初に飛んだメガネは紗那が受け取ったらしい



遠野は

「負けたらいろんな薬でドーピングしましょうねー」とか

「埋葬機関で修行しますか」

なんて恐ろしいこと言われてる

かわいそうに・・・



こっちは黒桐に

「式、頑張ってね」

って応援されてるのが嬉しかった

ある意味勝利した気分だ







「勝負あり」

何回目かの誠さんの声が響く

「とりあえず俺の勝ちってことで良いな遠野」

両義さんが終わりを告げた

「うん、それが結果だし文句無いよ」

終わった、とても長く感じた

結局日暮れまで戦って二勝三敗と言う戦績

言い訳をすれば四戦目が終わった時点でもう体力のない僕に

「引き分けじゃ後味が悪いからもう一戦するぞ」

と言われて勝てるはずがなかった

僕も両儀さんも服はボロボロで埃まみれになっていた



「早く風呂に入りたいな」

独り言を呟く

「良いですね、皆さんもご一緒にどうです」

紗那さんが楽しそうに両儀さんと僕を見て話す

「ああ」

両儀さんも俺も埃まみれだったので

食事よりも風呂が先で助かった



みんなが各々の着替えを持って脱衣所の入り口に

到着すると黒桐さんが誠さんに質問する

「男性用の風呂場はどこにあるんですか」

「用意していません」

「え、どういうことですか」

「紗那様が皆様と入浴したいとのことでしたので」

僕と黒桐さんは顔を真っ赤にした

「んー私はかまわないよ」

「ほう、それはおもしろいな」

アルクィエイドと燈子さんは即答した

まあ、二人ともプロポーションは完璧なわけだし



「なっなにをふざけてるんですか兄さん達と一緒に

入れるわけないでしょう」

秋葉が顔を真っ赤にして文句を言ってる

「じゃあ志貴さんの背中は私と翡翠ちゃんで流してあげますねー」

「あの、志貴様よろしくお願いします」

何をよろしくするのかはよく分からないが

翡翠と琥珀さんはオッケーみたいだ

「秋葉さん、ここはしょうがないです」

鮮花さんが秋葉をなだめる

「ただし、兄さん達が嫌らしい目で誰かを見ていたら

裸で叩き出しますからね」



「「はい」」

秋葉の声に僕と黒桐さんは同時に返事した



僕たちは脱衣所に入ったがさっきの秋葉の言葉もあったし

恥ずかしいというのもあって壁を向いて服を脱いだ

黒桐さんも同様らしい

燈子さんとシエル先輩、アルクェイドは

用事があってあとから来ると言って

外に出ていった



僕と黒桐さんが最初に風呂場に入った

他の人が来る前に湯船に入ってしまおうと思っていたのだが

「志貴さん、背中を流してあげますねー」

後ろから琥珀さんの声が聞こえた

遅かったか





「遠慮しとくよ琥珀さん」

「恥ずかしがらなくても良いですよ

以前全部見ちゃいましたから」

そう言えば以前琥珀さんは寝てる間に僕を着替えさせて

くれたことがあった

そう言えばあのとき下着も変えてもらってたからな



「じゃあ、お願いしようかな」

照れくさくてうまく口が動かない

「ホントは翡翠ちゃんと全身を洗ってあげたいんですけどねー」

そう言って二つのタオルが僕の背中を動く

一つはなめらかに動く、これは琥珀さんだな

もう一つは震えながら陶器でも磨くように優しく動く

こっちは翡翠か、顔は真っ赤なんだろうな





「おい、黒桐背中を流してやる」

「珍しいね、式」

後ろを向いたまま黒桐が答える

私の方から幹也にしてあげることってあまり無いから、

なんて言える訳ない

「只何となくだ」

後ろの方で紗那の笑う声が聞こえRU

きっと照れ隠しだって分かってるんだろう

「式、どうでもいいけどタオルくらい巻きなさいよ」

後ろから鮮花の声が聞こえる



おもしろそうだからちょっとふざけてみるか

「黒桐には何回も見られてるし遠野も子供の頃

一緒に風呂に入ってたから見られても問題ないぞ」

「子供の頃と今は違うでしょ」

顔を真っ赤にして鮮花が吠える、さすがに手は出さないみたいだ

黒桐も耳が真っ赤になってる間違いなく顔も真っ赤だろう



「兄さん達小さい頃から知り合いだったんですか」

秋葉の驚いた声が聞こえる

「悪い遠野、紗那」

つい口が滑ってしまった

「もう、しょうがないわね式ったら」

紗那もばつが悪そうに呟く

「どういうことです」

秋葉が不機嫌そうに聞いてきた

「体が冷えてしまいますから温泉に

入りながら話しましょう」

紗那は温泉に入ってしまった

自分たちもそのあとに続く





黒桐と遠野が離れたところにいる

「もっとこっちに来ないと聞こえないだろ」

黒桐達を近くに呼ぶ

「まったく、式は無神経なんだから」

鮮花がぶつぶつ文句を言っているが気にしない



「兄さんと青葉さん、両儀さんは知り合いだったんですか」

秋葉が質問する

「ええ、幼い頃二人は修行のためにこちらの家に良く来ていました」

もっとも志貴君は忘れていたようだし両儀さんは名字が違っていたから

気づかなかったみたいですけど」

「志貴君は私と許嫁だったことも忘れていましたし」



「初耳です」

秋葉は俺の方を見ながら口を開いた

「さっきは関係ないって言ったじゃないですか」

秋葉の目に耐えきれずそう言うと

「関係はありませんが無効でも有りませんよ」

「そんな事がなくても志貴君は好きですし」

紗那さんは柔らかい笑顔で答える

言葉は同じでもアルクェイドと違い恥ずかしいとは

あまり思わない、それよりも懐かしくさえ感じる



「お前ら昔からその会話をするのが好きだな」

両儀さんは昔から僕が照れて許嫁は関係ないと言うと

紗那さんが決まって今のように答えていた事を教えてくれた



「もー燈子のせいで遅くなったじゃないたばこ買うのにいつまでかかってるのよ」

「やっぱり封印指定の魔術師は常識がないですね」

「うるさい、お前らがカレーを食ったりやくざと喧嘩してるから悪いんだ」

言い合いをしながらアルクェイド達が入ってくる

「「えっ」」

シエル先輩はバスタオルを胸元から巻いていたが

アルクェイドと燈子さんは一糸まとわぬ姿で入ってきたのだ

さすがに二人とも見事なスタイルだ

「「兄さん達は外を見てて下さい」」

秋葉と鮮花さんが僕たちをにらむ

「翡翠ちゃん、そろそろ誠さんの手伝いしましょう」

琥珀さんと翡翠は風呂場から出ていった

「逃げたわね、琥珀」

秋葉がぼそりと言う

「それよりも志貴背中流させてよー」

正面から腕を引かれて否応なくアルクェイドの体が目に入る

「分かった今行くからちょっと待て」

出来るだけアルクェイドを視界に入れないように移動する

何度見てもやっぱり恥ずかしいんだよな

アルクェイドは秋葉と何か話してからこちらに来た

「それじゃー行くよー」

「ああ」

次の瞬間ズシャと聞き慣れない音がして背中に激痛が走った

「ぎゃああぁ」

「どうしたの志貴」

分からないと言った顔でアルクェイドはこっちを見てる

「このばかそんなに強くやる奴がいるか」

「ばかじゃないわよ、妹が強くすればするほど

仲良い証拠だって言ったんだもん」

秋葉がこいつに嘘を教えたのか

「それよりも志貴、背中流すの楽しいね」

そう言って黒桐さんをターゲットにしたようだ

黒桐さんは赤くなって後ろを向くがアルクェイドは気にした様子もなく

お湯に入ったままの黒桐さんの背中も思い切り流そうとする

「このバカ女あっちに行け」

もう少しのとろろで両儀さんが割って入り

アルクェイドを追い払ってる





「それにしてもずいぶんと歪んだ兄妹愛だな」

秋葉に話しかける

「最初に言ったのに自業自得です

外に出さないだけましだと思ってください」

どうやらアルクェイドと私に二人が見とれていたのが

気に入らなかったらしい

「ついでに妹たちの背中も流してあげるね」

「秋葉、人を呪わば穴二つだな」

笑って秋葉に告げる

「きゃー」

「ひいぃ」




「アルクェイドもうやめろ」

「やだよー」

アルクェイドはよほど楽しいのかやめる気はまったくなさそうだ

秋葉と鮮花さんの背中を流し?

燈子さんに襲いかかる

まったく、・・・・どうなっても知らないからな

さて僕も温泉でゆっくりするか

温泉てのも久しぶりだもんな





「貴様、何をする気だ」

「橙子の背中を流してあげる」

「やめんか、アレが嘘だって分からんのか」

「気づいてるけど楽しいからやめない」

「やっやめ」

「えい!!」



普段からは想像できない橙子さんの「きゃー」と言う

声を聞いたところで両儀さんとシエル先輩に

取り押さえられた



ちなみに秋葉と鮮花さんは長時間肩まで温泉に浸かっていたらしく

ダウンしたので琥珀さん達を呼んで外に連れて行ってもらった



「二人ともよっぽど胸を見られたくなかったんですねー」

琥珀さんは去り際にそう言い残していった



その後シエル先輩もアルクェイドを連行して出てく

橙子さんもアルクェイドと出ていったけど

とんでもなく怖い笑顔でアルクェイドに言った

「背中を流してくれた御礼をしなくちゃな

ちなみにお礼は倍返し、恨みは三倍返しが常識だ」

と言う言葉が忘れられない



なんか六倍のお返しとかされてそうで怖いし



まあアルクェイドなら死ぬ事は無いだろう・・・・多分ね

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